ホンダはこのほど、国内の二輪車ラインアップで初となる一般向け電動二輪車「EM1e:」(イーエムワンイー)の発表会を、東京都港区の本田技研工業本社で開催。動力用電源に交換式バッテリーのHonda Mobile Power Pack e:(ホンダモバイルパワーパックイー)を採用し、一充電あたりの走行距離は53㌔を実現。新たに導入する「ホンダ二輪EV取扱店」で8月から発売していくという。
画像: 発表会で登壇した出席者。中央が開発者の後藤香織氏、左はホンダモーターサイクルジャパンの室岡克博社長、右が同社営業部の石見英昭部長

発表会で登壇した出席者。中央が開発者の後藤香織氏、左はホンダモーターサイクルジャパンの室岡克博社長、右が同社営業部の石見英昭部長

イーエムワンイーは〝ちょうどe:(いい)スクーター〟を開発コンセプトに、多くの人に使ってもらえるように原付一種の商材として提供。動力源として現在の充電インフラの整備状況を鑑みて、ユーザーが自宅でも不安なく充電できるように持ち運べて差し替えが簡単な交換式バッテリーを採用したという。

バッテリーも単体重量約10㎏で、シート下に配置する。充電時間は6時間で一充電あたりの走行距離は53㌔となる。車両価格も車両本体とモバイルパワーパックイー、家庭で使うバッテリー充電器「ホンダパワーパックチャージャーイー」を含めた設定だが、バッテリー(税込価格=8万8000円)や充電器(同5万5000円)も単体で購入可能だ。

後輪には、軽量で高効率なインホイールモーターを採用。減速機構を不要とした構造でエネルギーロスを抑えた駆動方式となっている。また、スイッチ一つで切替えが可能なECONモードを搭載。スロットル操作に対するモーターの出力をマイルドにし、初めて二輪車に乗る人の安心感を高めるとともに、バッテリー消費を抑えた走行を可能にしている。

一方、標準のSTDモードでは、原付一種クラスとして充分な動力性能を発揮することを狙いとし、力強さと穏やかさのバランスを両立。スムーズに発進しやすい出力特性にしたという。

ディメンションは、21年に中国で発売された五羊-本田摩托(広州)有限公司の電動二輪車「U-GO」と車体を共有しており、欧州地域でもホンダでは初となる電動二輪車として販売を予定している。このため、国ごとの使用環境や法規制などによる使い勝手の違いを想定した設計とした。年内にはインドネシアでの販売も予定している。

ホンダは、発表した同モデル以前にビジネス用電動二輪車として「ベンリィイー:(同プロ)」を、2019年に法人向けにリース販売を開始。21年には同電動三輪スクーターの「ジャイロイー:」と「ジャイロキャノピーイー:」をそれぞれ導入したことで、ホンダイービジネスバイクシリーズを完成させている。

いずれの車両もホンダモバイルパワーパック(同イー)を採用しており、過酷な使用用途のビジネス領域から電動化にチャレンジし、使用状況や使い勝手、交換式バッテリーの有用性についてユーザーから意見を募り知見を積み上げてきた。

今回、イーエムワンイーを一般ユーザー向けの電動二輪車として発売することで、電動二輪車の普及をさらに加速させる。同時に、販売網では既存の「二輪EV取扱店」と「二輪ビジネスEV取扱店」を統合して新たに「ホンダ二輪EV取扱店」を導入。これまで実績のある販売店で取り扱うことで安心と信頼のサービスを提供、部品供給やバッテリーの回収体制を盤石化していくとしている。

発表会では本田技研工業から同モデル開発者の後藤香織氏、ホンダモーターサイクルジャパン(HMJ)から同社代表取締役の室岡克博社長と同社営業部の石見英昭部長が出席した。発表会冒頭では室岡社長が電動化への取り組みを説明。後藤氏が製品の技術説明を行ったあと、石見氏が登壇した。

石見氏は今後の国内営業領域の取り組みとして、電動二輪車の取扱店を拡大していくことを発表。「今回のホンダ二輪EV取扱店の導入で、全国の販売店約560店が取扱店になる」と説明した。さらに、ベンリィイー:などイービジネスバイクシリーズを一般販売していくこともアナウンス。同シリーズは合計1万1000台を目標に販売していくという。

一方、室岡社長は本紙の個別取材でイーエムワンイーは「ホンダコミューター店」への意思表示だと説明。「販売店様が先代から2代目と代替わりをされていくなか、原付一種領域での電動二輪車の販売は、今後も活動を共にしていく『本気』の表れである」と強調した。同時に新たな顧客管理システムを提案することで、ソフト面でも後押ししていくという。

発表会では質疑応答もあり、ホンダモバイルパワーパックイーを使った二輪車用バッテリー交換施設『Gachaco(ガチャコ)ステーション』での利用可否の質問では、同ステーションは現在法人向けだが、利用に向けて検討中と回答。

また、助成金についても質問があり、国や東京都が推奨する「電動バイクの普及促進事業」の対象車両に該当すると回答。都内の場合、購入時に最大で13万9000円の助成が受けられる。

「販売店様の将来を担う商品」 HMJ室岡社長

画像: 今後の主力商品と述べる室岡社長

今後の主力商品と述べる室岡社長

今回発表したEM1e:には特別な思いがあります。昨年からホンダコミューター販売網への訪問活動を行っていますが、地域密着型の販売・サービスをされている素晴らしい販売店様が数多くありました。また、店主が先代から2代目に代替わりされ、将来に向けて事業継続を模索されている販売店様も多く見受けられました。HMJとしては今後もホンダコミューター販売店様と活動を共にしていく上で、原付一種の電動二輪車を商品として提供することは、販売店様の将来を共に考えていく『本気』の意思表示でもあります。

▼EM1e::
▽全長=1795×全幅=680×全高=1080㍉
▽ホイールベース=1300㍉
▽重量=92㎏▽一充電走行距離=53㌔(30㎞/h定値走行テスト時)
▽原動機種類=交流同期電動機▽最高出力=2.3PS/540rpm
▽最大トルク=9.2kgf/25rp,
▽バッテリー種類=リチウムイオン電池
▽発売日=8月24日
▽税込価格=29万9200円(バッテリーと充電器込み)
▽年間販売計画=3000台

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